みんみんのブログ

スローに生きよう

賢治と春画

 先日、春画展を見に行ってきました。私は春画についての知識がまったくなかったので、せっかく観に行くのだからと思い事前学習をしていきました。そこで知った意外なことは、宮沢賢治が実は浮世絵の春画のコレクターだったということです。私は宮沢賢治に対して清らかなイメージを持っていました。生涯独身の賢治は「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」などの作品を残します。彼の世界はファンタジーの深い世界に入っていきますね。そして透明感があります。

 国際日本文化研究センター早川聞多さんによると、鈴木春信の春画というのはすべて「見立て」になっているのだそうです。たとえば春信の「風流坐鋪八景」という春画版は中国の景色の「瀟湘八景」((しょうしょう はっけい:中国の山水画の伝統的な画題)の風景を性愛という情況に見立てているのだそうです。ですから、春信の絵を見たときにこの「瀟湘八景」が
見えてこないとダメなそうなんです。早川さんによるとこれを同時に見ることのできる人を「見巧者(みごうしゃ)」と言うそうで、見巧者というのはものすごい教養人だったというわけです。ですからいわゆる春画だから面白い!というのではダメなんだとか。そして宮沢賢治は、現代人でありながらその「見巧者」であったらしいのです。

賢治の持つ透明感のある深い世界は春画のエロスとどう関係あるのだろうと考えました。これには少し時間がかかりそうです。

私は単純なので、「そうか!私も見巧者という者になってみたい!」と意気揚々と春画展に出かけたのですが、鈴木晴信の春画を目の前にしてもなんの風景も見えてきませんでした。当たり前ですが、私はやはり凡人だったようで・・・。チベットに行って高山で瞑想する修行でもしなければ、もしかして見えてこない風景なのかもしれません。一応、あの角度、この角度、遠目からも見て、目を細めて見たりしたのですが、私には男女が楽しんでいるようにしか見えなかったのです。

江戸文化の専門家の田中優子さんによると、春画は嫁入り前の道具の一つであったり、合戦時のお守りに使われたり、おまじないに使われたりと
決して性的好奇心を満たすものだけではなかったようです。また、なぜか貸本屋の店員さんは皆美男のイケメンだったとか。

知れば知るほど面白い春画の世界。でも、ちょっと笑えるシーンが多いのです。当時は春画とは言わず「笑い絵」と呼んでいたのもわかるような気がします。

春画展、オススメです。

 

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鈴木春信「坐鋪八景」写真引用:

cardiac.exblog.jp

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瀟湘八景図

写真引用:

仙台市博物館 - 主な収蔵品 | 仙台市